シネクドキ・ポスターの回路

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ふたたび注目されつつあるシティボーイズについて。

NHKの某雑学番組でたびたび登場したり、幾多のお笑い芸人たちがリスペクトを公言したりと、最近なにかと注目されているコント界のレジェンド、シティボーイズ。今回は、再評価が高まっているその偉大な功績をご紹介します。

 

 

 

コントグループ「シティボーイズ」とは?

シティボーイズは1979年、同じ劇団に所属していた大竹まこと、きたろう、斉木しげるの三名によって結成されました。当時流行していたシリアスな芝居に反発し、徹底的にナンセンスな笑いを追求した彼らは、多忙なソロ活動のかたわら年一本ペースで舞台作品を発表し続け、いまや日本のコント界を代表する存在となり、あらゆる分野の表現者たちに多大な影響を与えました。

チケット即日完売の単独公演では、ベテランらしい安定感を見せる一方で、先に例のない野心的な試みを次々と敢行。日比谷野外音楽堂での「野外公演」を皮切りに、渋谷公会堂新国立劇場、はては巨大テント小屋での公演など、数々の前人未到の偉業を成し遂げた、まさに唯一無二のコントグループです。

 

シティボーイズが切り拓いた「笑い」の世界

まともに見えてどこかズレているきたろう、唯一の常識人である大竹まこと、明らかにぶっ飛んでいる斉木しげる……三者三様の絶妙なキャラクターと、公演ごとに変わる作家/演出家ならびにゲスト出演者のコラボレーションによって、シティボーイズは「これまでにない笑い」を作り続けてきました。

宮沢章夫三木聡細川徹天久聖一などの錚々たる面子が作家として参加してきた他、ゲスト出演者には竹中直人中村有志いとうせいこう野宮真貴五月女ケイ子ムロツヨシ等、親交の深い面々から意外な組み合わせまで、芝居経験にこだわらない幅広く大胆な人選を敢行、ときに大きな話題を呼びました。

加えて、こだわりを感じさせる豪華なオリジナル劇伴もまた、シティボーイズ公演の特徴のひとつ。あの小西康陽を筆頭に、金子隆博ルイ・フィリップ石野卓球など数々の著名ミュージシャンがサウンドトラックに参加、書き下ろしのオリジナルスコアを提供し、公演を盛り上げました。

このように「お笑い」以外の分野との密接なコラボレーションを実現した点においても、シティボーイズは日本コント史における第一人者であったと言えるでしょう。前例のない「笑い」を開拓し、その先陣を突っ走ってきた姿勢は、まさにコントの歴史を切り拓いた「レジェンド」に違いありません。

 

 

これだけは観ておきたい傑作ライブ5選!

ここからは、映像ソフト化された数多くの公演作品の中から、特におすすめの5作品をご紹介します。これからシティボーイズの世界に触れる方、または久しぶりに見てみようかな?と言う方も、参考にしていただけたら幸いです。

 

1996年公演『丈夫な足場』

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ゲスト:中村有志いとうせいこう 作/演出:三木聡 音楽:小西康陽

前年公演『愚者の代弁者、うっかり東へ』に続き、盟友である中村有志いとうせいこうが参加。黄金期と言われる90年代の三木聡時代においても、95年〜98年の五人体制による一連の公演は屈指の人気を誇り、中でも本作は「シティボーイズ最高傑作」とも称される名作です。五人による鉄壁のコンビネーションと見事な構成による圧巻の伏線回収、まさにコント史に残る作品と言えるでしょう。

 

1999年公演『夏への無意識』

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ゲスト:なし 作/演出:三木聡 音楽:小西康陽

四年にわたって続いた中村/いとうを交えた五人体制から一転、六年ぶりとなったゲストなしの三人公演。リストラされた中年男三人が公園で会社ごっこに明け暮れる30分超の大作『漂流商事』に始まり、哀愁あふれる切ない「笑い」が展開していきます。ナンセンスながらもペーソスを感じさせる内容は、まさにシティボーイズにしか体現できない唯一無二の世界観と言えるでしょう。

 

2003年公演『NOTA 恙無き限界ワルツ』

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ゲスト:中村有志、YOU、五月雨ケイ子 作/演出:細川徹 音楽:西寺郷太

2001年公演『ラ・ハッスル・きのこショー』から作/演出が細川徹へと交代、また中村有志がレギュラー参加となり、以降2013年までの全公演にゲスト出演しました。本作品には中村さんに加えて、RGS時代に共演経験のあるYOU、漫画家として知られる五月雨ケイ子が参加。個性的なメンバーが揃い、数々の伏線を交えた巧みな構成のもと、唯一無二の世界観が繰り広げられました。

 

2011年公演『動かない蟻』

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ゲスト:中村有志辺見えみり荒川良々 作/演出:天久聖一 音楽:坂口修

10年間にわたってコラボレートしてきた細川徹に代わり、作・演出を務めたのはサブカルチャー界有数の漫画家として知られる天久聖一。前年までのマイルドな作風から一転、辺見えみり荒川良々という個性際立つゲスト陣を交え、ダークで強烈な世界観のもと、同年に発生した東日本大震災をテーマに取り入れた、シティボーイズ史上もっともメッセージ性の強い作品となりました。

 

2013年公演『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』

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ゲスト:中村有志いとうせいこう戌井昭人笠木泉 作/演出:宮沢章夫 音楽:高田蓮

竹中直人中村有志いとうせいこう等を交えた伝説のユニット「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」で作・演出を務めた宮沢章夫を24年ぶりに迎え、いとうせいこうも久しぶりの参加、ラジカル復活とも謳われた金字塔的公演。前公演に続き東日本大震災をテーマとして、ナンセンスでありながら時代批評と社会風刺を交えた、シティボーイズにしか描けない前人未到の内容となりました。

 

 

他にも名作満載のシティボーイズ作品!

いかがでしたでしょうか。シティボーイズが約40年にわたって追求してきた、唯一無二の「笑い」の数々をご紹介してきました。

シティボーイズは、2015年公演『ファイナル part.1 燃えるゴミ』を最後に舞台活動からの引退を発表、現在は活動休止の状態となっていますが、2017年に三木聡との17年ぶりのコラボレーションとなった長編コント『仕事の前にシンナーを吸うな、』を発表したり、その後も所属事務所のイベントで新作コントを披露したりと、単独公演こそ休止中ながらコンスタントに舞台活動を続けています。この流れで、新作公演の実現にも期待を寄せたいところですね。

今回ご紹介した他にも、全部で22の公演作品が現在ソフト化されており、名作コントが満載です。一部入手困難となっている作品もありますが、興味のある方はぜひチェックしてみてください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。