シネクドキ・ポスターの回路

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幻の傑作ゲーム『Art Style』について。

 

 

皆さんは『Art Style』というゲームをご存知でしょうか。

2008年から2011年にかけて、ニンテンドーDSiウェアWiiウェアとして任天堂からダウンロード販売されていたゲームシリーズです。販売は任天堂でしたが、開発のほとんどを「ラブデリック」の系譜にあたる株式会社スキップが務めており、大手作ながらインディーズ味あふれる前衛的でハイセンスな作品ばかりでした。

今回のお題は「私がハマったゲームたち」ということで、個人的に人生で一番ハマったといっても過言ではない『Art Style』シリーズについて、紹介させていただきたいと思います。

 

 

シリーズ『Art Style』とは?

発端は2006年、ゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売された『bit Generations』というシリーズでした。

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公式サイトに掲載されている通り、シリーズとしてのコンセプトは、

bit Generations』シリーズは、"GAME"の原点というものを見つめ直し、すべてが点と形で描かれた世界を、鮮やかな色彩とサウンドで表現した、新しいラインナップです。

というもの。シンプルなゲーム性、ドットやラインのみで構成されたビジュアル、スタイリッシュなサウンドで仕上げられたクールでカッコいいシリーズでした。

開発のほとんどを担当したのは、ゲーム制作会社「株式会社スキップ」。名作RPG『moon』などを送り出した人気ゲーム会社「ラブデリック」の元スタッフを中心に設立された会社で、他にも『ちびロボ』などのヒット作を手掛けました。

 

シリーズ『bit Generations』発売から2年後の2008年、このシリーズを下敷きとして始動したのが『Art Style』です。ニンテンドーDSiウェアWiiウェアというダウンロードソフトの形態で発売されました。

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こちらも、公式ホームページにシリーズとしてのコンセプトが掲載されています。

プレイヤーの操作でサウンドとビジュアルがリンクする…

その心地よいゲーム体験をご提供します。

操作、サウンド、ビジュアル……と、ゲームにおける基本要素を重視した上で「心地よさ」を謳っているところに、コンセプトとして前シリーズにも通じる「シンプルさの追求」また「ゲームの原点への回帰」の姿勢が見てとれると思います。2008年から開始したシリーズは、前身の『bit Generations』で発表された作品のリメイクを含む計12作品を発売したのち、2011年に終了しました。

 

 

シリーズおすすめ作品5選!

ここからは、シリーズとして発表された12作の中から、個人的におすすめの作品たちを紹介していきたいと思います。このあたりのゲームシステムや空気感から、シリーズ特有の雰囲気や魅力などを感じていただけたらと思います。

 

おすすめ①『nalaku』

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2009年2月25日発売(DSiウェア/514円)。

5×5のキューブで構成されたフィールドの上でプレイヤーを操作し、落ちてくるキューブを避けたり動かしたりしながらキューブを上っていく、とてもシンプルなゲーム。ゲームとしては全然違いますが、雰囲気はちょっと『IQ』に似ているかも。一定時間が過ぎると下のフロアは落下し、そこに残っているとゲームオーバーになります。プレイヤーが「わぁー」と(どこか気の抜けた声で)叫びながら「奈落」に落ちていく演出が印象的です。

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個人的に『Art Style』シリーズを知るきっかけになった作品です。ゲームシステムが非常にシンプルで分かりやすく、シリーズの中でもプレイしやすいゲームなのではないかと思います。ゴールを目指す通常モードの他に、ひたすら上を目指す「エンドレスモード」もあり、ハマるとかなり没頭できるゲームだと思います。

 

おすすめ②『HACOLIFE』

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2009年2月25日発売(DSiウェア/514円)。

一言で言うと、方眼紙から展開図を切り出して、立方体を作っていくゲームです。何が面白いの、と思われるでしょうが、私が人生でいちばんハマったゲームのひとつだったりします。用意された問題を解いていく「TRIAL」モードと、巨大な方眼紙から出来るだけ多くの立方体を作る「FACTORY」モードが用意されています。立方体を組み立てていくアクションが気持ちいい。そしてドット絵のキャラクターがカワイイ。

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このゲームはハマりました。もしかすると、DSで買ったソフトの中で一番やり込んだ作品かもしれません。にも関わらず、どうしてコレを「買おう」と思ったのか、それはよく覚えていません。

ご存知でしょうか、立方体の展開図って全部で11種類あるのです。このゲームの「TRIAL」モードをプレイしていると、その11種類をすべて覚えることができます。そして「FACTORY」モードに慣れてくると、方眼紙から展開図を「効率よく」切り出すコツをつかむことができます。とても実用的なゲームです。ハマるかどうかは個人差かもです。

 

おすすめ③『ORBITAL

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2009年5月12日発売(Wiiウェア/617円)。

宇宙空間を漂う小さな惑星を、近くの惑星に接近する重力/遠ざかる反重力で操作して、同じ大きさの惑星と衝突させて大きくしたり、小さな惑星を衛星にしたりしながら、ステージクリア=ゴールの惑星を衛星にすることを目指すゲーム。前シリーズ『bit Generations』で発表された作品のリメイク版です。Wiiウェアの中でもかなり独特な操作性、雰囲気のあるゲームだと思います。

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大画面と良質なスピーカーでやったら、かなり没頭できるような気がします。割と難易度は高めだったと思いますが、エンディングはスゴかったです。

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この作品のほか『Art Style』シリーズのほとんどのゲームで音楽を担当した藤原さんのSOUNDCLOUDで、サウンドトラックが公開されています。衛星が増えるごとにBGMが賑やかになっていき、しかし「月」を衛星にした(ボーナススコアがもらえる)途端、とても寂しげな音楽になる演出がとても好き。

 

おすすめ④『LIGHT STREAM』

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2011年9月6日発売(Wiiウェア/617円)。

こちらも『bit Generations』のリメイク。ビジュアルのほとんどが線のみで構成されたレースゲームです。ビジュアル/サウンド面において、シリーズの中でもかなりカッコいい作品だと思います。

3つのコースを通して優勝を目指す「campaign」モード(マリオカートで言う〇〇カップみたいなもの)があり、そこで優勝すると「freeway」モード(その名の通り、高速道路みたいなモード)で新しい「ジャンクション」がオープンします。その新しいジャンクションに入って新エリアまで到着すると、新しい「campaign」がプレイできるようになる……という、凝ったシステムになっています。

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Wiiウェアでは一番ハマったゲームだと思います。ステージ(campaign)は全部で5面あるのですが、最後の2つは本当に難しかったです。でもカッコいい雰囲気にハマり、ずっとやり続けていたら最後には全クリできた思い出です。

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こちらもサウンドトラックが公開されています。このシリーズのゲームはどれも音楽がいいのですが、この作品の音楽は特に秀逸で、海外ではサントラCDが発売されたという話も耳にしましたが、少なくとも日本では未発売です。一度、いい音質で聴いてみたい……と思っているのですが、なかなか難しそうです。近年のゲーム音楽の中でも、かなりカッコいい部類に入ると思うんだけど……。

 

おすすめ⑤『PENTA TENTACLES』

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2011年10月18日発売(Wiiウェア/617円)。

シリーズ最後の作品にして、オリジナリティに溢れた「らしさ」全開の集大成的作品。謎の生命体(?)を操り、周囲の微生物を吸収して触手を伸ばしていく……という(相変わらず)ユニークな内容です。そこに加えて、三味線などの和楽器をフィーチャーした異色のトラックが絶妙にマッチして、独特な世界観が形作られています。そんな怪作でありながら、全ステージクリアはシリーズの中でも最高レベルの難易度です。

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ルールはシンプル「触手を伸ばす」というだけなのですが、通常の「STAGE」モード(触手の色やノルマとなる触手の長さで難易度が変わっています)に加え、ハイスコアを目指す「ENDLESS」モード、ひたすら一本の触手を伸ばしていく「SNAKE」モードと、多彩な遊び方が収録されているので、いろいろな切り口で楽しむことができます。個人的には、無敵状態である「サイクロン」の演出が、最高にカッコよくて気持ちよくて好きです。

 

 

おわりに……記事のタイトルについて

いかがでしたでしょうか。このように『Art Style』シリーズは、手頃に買える低価格ソフトでありながら、長い間存分に楽しむことができるアイデアとセンスに溢れた傑作ゲームシリーズだったのです。その魅力を、この記事で少しでも感じていただけたら幸いです。

 

しかし……実は、この『Art Style』シリーズ、もう手に入りません

タイトルで「幻の〜」と冠したのは、このためです。もう買えません。釣りタイトルとか、大袈裟に書いているのではありません。本当に「幻」です。

 

今回紹介した『Art Styleシリーズ』を含む「Wiiウェア」は、2019年1月31日に「Wiiショッピングチャンネル」のサービスが終了したことを機に、配信が終了してしまいました。ゆえに、もう購入することができないのです。もしパッケージ版が出ていれば、ブックオフなどで中古として売買されたりもしたのかもしれませんが、いかんせんダウンロード専用のソフトなのでそれもありません。こういう風に、サービスを提供する側の運営に大きく左右されてしまうというのは、パッケージ版にはない弱みだと思います。

また「DSiウェア」に関しては、一応まだ3DSシリーズ用の「ニンテンドーeショップ」は動いているようなので購入自体は可能なようですが、3DSシリーズ本体の生産がすでに終了しているので、そう遠くないうちにこちらのサービスも終了するものと思われます。こちらもダウンロードでしか購入できないので、サービスが終わってしまえば購入は不可能です。

 

というわけで『Art Style』シリーズ……さんざん紹介しておいて、なのですが、現在は入手不可能となってしまっています。どうしてもプレイしたければ「私、買いました」という人の家にお邪魔して、やらせてもらうくらいしかありません。

(ちなみに『bit Generations』シリーズはGBAソフトとしてパッケージ販売されたものなので、たまに中古市場に出回ったりしています。案の定(?)販売数は多くはなかったようですが、現在そこそこのプレミア価格で取引されていて、やはり一部界隈で根強い人気はあるようです。)

 

もう売っていないというのに、なんで今さら紹介したんだ!……と思われるかもしれませんが、いや今こそ、こうして少しずつでも認知度を高めていくことで「移植・再発売」の機運が高まってくるかもしれないのです。

 

私はなんとか、この隠れた傑作ゲームの復刻(あわよくばサントラも出てほしい)が実現することを切望していて、その可能性を現実的に考えてみると「移植版」としての再発を待ち望むくらいしかありません。これは当シリーズに限らず、すべての(提供元のサービスが終わってしまった)ダウンロードコンテンツに通じて言える話であると思います。

特に、Wiiウェアの作品群は現行の「Nintendo Switch」でも、そのままプレイできる気がします。せめてWiiウェア発売分だけでも、Switch版のeショップで再発されたりしないだろうか。一応「ラブデリ系」の一派として……三年前の『moon』復刻に続くような流れで、あわよくばサントラも併せて再発されることを願っております(ダメ元で)。

 

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