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プリンス『Sign O' The Times (Super Deluxe)』個人的おすすめトラック!

その圧倒的なクリエイティビティによって、幾多のヒット曲、そして数えきれない「未発表曲」を遺した、80年代屈指の天才ミュージシャン・プリンス。2016年の逝去後、一度も公式リリースされたことのなかった膨大な未発表曲のアーカイブがようやくパッケージ化され、日の目を見ることとなりました。

今回は、プリンス最高傑作とも称される名盤『Sign O' The Times』のスーパー・デラックス・エディション(2020年発売)に収録された45曲におよぶ未発表音源の中から、個人的におすすめの10曲を厳選してご紹介します。

 

 

 

天才プリンスの最高傑作『SOTT』とは

アルバム『Purple Rain』から活動をともにしてきたバックバンド、ザ・レボリューションを1986年に解散したプリンスは、再び単独での楽曲制作ならびにレコーディングを開始、バンド解散の翌年にあたる1987年、二枚組の大作『Sign O' The Times』を発表しました。

このアルバムが完成するまでには、数々の紆余曲折があったことが知られています。この時期、プリンスのクリエイティビティは頂点に達しており、膨大な数の楽曲がレコーディングされ、それらをリリースするべく幾多のプロジェクトが企画されました。しかし、ザ・レボリューションの解散などの影響により、あらゆるプロジェクトが立ち上がっては頓挫、最終的に当時の集大成として纏められたアルバム『Sign O' The Times』が発表されたのでした。

 

発売から33年を経て復活した『SOTT』

それから33年。本編アルバムのリマスター音源に加え、先述のプロジェクトの頓挫などに伴って封印されていた未発表曲の数々、かのマイルス・デイヴィスもゲスト参加したペイズリー・パークでのライブ映像まで収録した「スーパー・デラックス・エディション」が発売されました。

デモならではのアットホームな雰囲気の漂う音源から、本編収録の楽曲群にも比肩する名曲まで、その充実ぶりはまさしく33年越しに実現したファン待望の内容と呼ぶにふさわしいものとなりました。

 

 

個人的におすすめ『Sign O' The Times』未発表曲!

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充実の内容だった「スーパー・デラックス・エディション」ですが、あまりに充実しすぎていてどの辺りから聴けばいいのか分からないという方も少なくないかもしれません。本当は全曲聴くことが出来れば良いですが、全部で63曲(!)収録された未発表トラックを総ざらいするのは、なかなかの根気を要する作業です。

というわけで、今回は個人的におすすめの未発表曲10曲を選び、プレイリストを作成してみました。よかったら聴いてみてください。

 

01. Strange Relationship

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アルバム本編にも収録され、ライブでもたびたび演奏された人気曲ですが、こちらはその「オリジナル版」にあたる未発表音源です。楽曲はもともと1985年ごろに完成していましたが、その後ザ・レボリューションが解散、プリンスはウェンディ&リサが手がけたイントロ等を大幅に削除して、本作に収録しました。

 

02. Everybody Want What They Don't Got

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幻のアルバム『Dream Factory』のレコーディングにおいて制作された楽曲。プリンスの未発表曲の中でもファン人気の高い作品で、2000年に実施された未発表音源のリリースプロジェクト『Crystal Ball Volume Ⅱ*1』の収録曲を決める投票企画でも高い得票を獲得、収録タイトルとして選出されました。

 

03. Jealous Girl (Version 2)

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晩年の名曲『Baltimore』を彷彿とさせるポップな名曲。1981年に制作されてから、フッカーズ、バングルズ、ボニー・レイットの三組に提供が検討されたものの、どれも叶わずお蔵入りとなってしまいました。本音源は「Version 2」ですが、オリジナルにあたる「Version 1」は今もなお公開されていません。

 

04. I Need A Man

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ガールズ・グループ、フッカーズへの提供楽曲として制作されましたが、フッカーズがヴァニティ6として再構成されたことをきっかけにお蔵入り、その後ブルースシンガーとして知られるボニー・レイットへの提供も検討されましたが、レイットが辞退したため叶いませんでした。

 

05. In A Large Room With No Light

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こちらも『Dream Factory』制作中にレコーディングされ、ザ・レボリューションの解散に合わせてお蔵入りとなった楽曲。未発表曲の中でも高い人気を誇る一曲です。2009年、モントルー・ジャズ・フェスティバル出演に合わせて、ジャズ風のアレンジで再録音された音源が公開され、ステージでも演奏されました。

 

06. Train

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もともとは『Dream Factory』に収録される予定でしたが(ザ・レボリューション不参加の作品ながらも)叶わず、その後R&Bシンガーとして知られるメイヴィス・ステイプルズに提供された楽曲です。サンプリング(?)によって刻まれる重厚なリズムが、巨大な列車を走らせる蒸気機関を彷彿とさせます。

 

07. When The Dawn Of The Morning Comes

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幻のプロジェクト『The Dawn』のために書き下ろされた楽曲ながら、プロジェクトの頓挫のためにお蔵入りとなりました。非常にプリンスらしいリン・ドラムの軽快なビートが心地いい一曲です。似た曲として、アルバム『Lovesexy』レコーディング中に制作された、同じく未発表の楽曲『The Line』が挙げられます。

 

08. Teacher, Teacher (1985 Version)

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1982年にプリンスが単独でレコーディングした未発表曲を、ウェンディ&リサを交えて1985年に再録した音源。オリジナル版よりもポップなアレンジが施されています。ロック・バンド、スリー・オクロックへの提供も検討されましたが叶いませんでした。ちなみに、1982年版は『1999』のデラックス版で聴けます。

 

09. All My Dreams

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もともとはアルバム『Parade』に最終曲として収録される予定だった楽曲でしたが、発表前に削除されてしまいました。その後もいくつかのプロジェクトで収録が検討されましたが、ザ・レボリューションの解散にともなってお蔵入りとなりました。楽曲の一部が人気曲『Acknowledge Me』に流用されています。

 

10. Forever In My Life (Early Vocal Run-Through)

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アルバム本編、ディスク1の最終曲として収録された楽曲の、制作初期にあたるバージョンです。プリンスらしい個性的なアレンジが施された完成版に比べ、楽曲の魅力をストレートに引き出した、シンプルな仕上がりとなっています。このバージョンを聴くと、アルバム版の聴こえ方も変わると思います。

 

 

ファンの数だけ楽しみ方がある

いかがでしたでしょうか。今回、プレイリストを制作しつつ聴いていて「やっぱりプリンスってスゴいんだな」と、改めて実感しました。どの曲も、お蔵入りになっていたというのが信じられないくらい、クオリティの高いものばかり。

今回ご紹介した楽曲の他にも「スーパー・デラックス・エディション」は名曲が満載です。私にとって印象的だったのは上記10曲ですが、きっと聴く人それぞれで印象に残る音源は異なると思います。というわけで結局「ぜんぶ聴いてみてください」という結論に落ち着いてしまいました。何だったんだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*1:後に『Crystal Ball Volume Ⅱ』企画は中止となり、リリースは見送られました。