シネクドキ・ポスターの回路

映画や音楽を楽しみに生きています。

6月、観た映画を振り返ってみる。

 

 

はじめに

思いがけず二ヶ月もかかってしまった「80年代のムーンライダーズ」シリーズのせいでおかげで、この頃はもはやムーンライダーズ専門みたいになってしまっている当ブログ。大丈夫でしょうか。ちょっとニッチに振り切れすぎなのでは。私自身、少し思い切りが過ぎたのではないか、と若干の後悔を抱かなくもありません。

裏話みたいになりますが、実際のところを打ち明けてしまうと、私自身がムーンライダーズに没頭していたのは、それこそ新アルバムが出た4月くらいのことです。確かにその頃は、本当にもうムーンライダーズばっかり聴いていました(だから「これくらいしか書くことない」ということで、例のシリーズを見切り発車で始めてしまったわけです)。

 

しかし、ぶっちゃけ5月に入った時点で(決して嫌いになったとかではないが)もうだいぶ熱は冷めていて、6月はもうまったく別のものに没頭していました。その一方で、当ブログでは淡々とシリーズの更新を続けていた私。本当はその「没頭しているもの」についてリアルタイムで書きたかったのですが、いかんせん「80年代の」と銘打ってしまったばかりに、引くに引けず止むに止まれず、シリーズを完遂させざるを得ませんでした。とはいえ、書いているのは楽しかったですけどね。

二ヶ月に及んだ「ムーンライダーズ強化期間」が完結し、今回からようやく通常運転に戻ります。というわけで今回は、6月から今もなお現在進行形で私が没頭している話題について、やっと書こうと思います。それは「映画」です。

 

もともと映画は好きですが、最近いろいろな出来事が重なって、しばらく落ち着いていた映画熱が再燃してきました。振り返ってみれば6月はほとんど毎日、1日1本(たまに2本)のペースで観まくっておりました。おかげさまで、素晴らしい作品との出会いもたくさんあったので、今回は私が先月中に観た全33本の映画の中から、個人的にオススメの作品をまとめてご紹介したいと思います。

個人的な嗜好だけで選んでいるので、ジャンルから何から無節操きわまりない並びとなっておりますが、なんらかの興味(?)を持っていただけたら幸いです。

 

 

シリアル・ママ (6月2日 鑑賞)

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メリーランド州ボルチモアのとある郊外。主婦ビバリーは、歯科医である夫を支える良き妻であり、また二人の子どもを優しく見守る良き母であった。しかし一方で、一家の平和を乱したり、社会のルールを守らない者に対しては、容赦なき鉄槌を下す一面を持っていた。やがてビバリーによる制裁は、常軌を逸してエスカレートしていき、世間を巻き込んだ大事件へと発展していく……。

60年代屈指の問題作『ピンク・フラミンゴ』の監督として知られる鬼才、ジョン・ウォーターズによる異色のブラック・コメディ。それまでの正統派のイメージを覆した主演、キャスリーン・ターナーの圧倒的な演技も話題になりました。

もう開始10分から破壊力抜群です笑。そこから全編にわたって展開の流れが素晴らしく、大オチ(これがまた最高)までまったくダレずに楽しめました。キャスリーン・ターナーの演技も素晴らしかったです。

 

野いちご (6月5日 鑑賞)

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老教授であるイサクは、その長年の功績を認められ名誉学位を授与されることになった。授与式に出席するため、彼は自ら運転する車で、義理の娘マリアンヌとともに旅に出た。道中、立ち寄った思い出の場所や、思いがけない出会いを通して、自らの生涯を追想するイサク。封印していた記憶が、彼を容赦なく責め立てていく。終わりのない後悔と自責の果てに、彼が辿り着いたのは……。

巨匠イングマール・ベルイマン監督の代表作。直面する「老い」という普遍的なテーマを取り入れた本作は、監督の作品の中でも高い人気を誇っており、巨匠アンドレイ・タルコフスキー監督もオールタイムベストとして本作を挙げています。

ベルイマン監督の作品は、勝手に「難解」というイメージがあり、敬遠してしまっていましたが(もちろん簡単ではないけど)普通に楽しむことが出来ました。重厚な古典というより『渡鬼』とかを観る気分で楽しめる作品だと思います。

 

プリシラ (6月6日 鑑賞)

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舞台はオーストラリア。シドニーで活躍中のドラァグ・クイーン、ミッチは中央部の砂漠地帯・アリススプリングスでの仕事に向かうべく、ともにドラァグクイーンとして活躍する古くからの友人バーデナット、若く陽気なフェリシアとともに、一台のキャンピングカーで旅に出た。思いがけない出会い、いわれのない偏見、騒動だらけの道中の果てに、彼らを待っていたそれぞれの運命は……。

本国オーストラリアで大ヒットを記録、劇中に登場するキャンピングカー「プリシラ号」は、シドニーオリンピックの開会式にも登場しました。ガイ・ピアースは本作で注目を集め『L.A. コンフィデンシャル』でハリウッドデビューを飾りました。

王道のロードムービーで、久しぶりにすっきりした気持ちで観終わった映画でした。オープニングからエンドロールまで音楽のセンスが抜群で(オープニングはシャーリーンの "I've Never Been To Me")お三方の演技も素晴らしいです。

 

ザ・マスター (6月12日 鑑賞)

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第二次大戦後。復員兵であるフレディはアルコール依存症を患い、さまざまな職を転々としながら放浪の日々を送っていた。そんなある日、彼はランカスター・ドッドという作家に出会う。非凡なカリスマ性を持ったドッドは、彼の教義を信じる人々とともにコミュニティを結成、各地の信者たちを訪問していた。その旅に同行することになったフレディは、次第に彼の思想へ傾倒していき……。

群像ドラマの名作『マグノリア』で知られるポール・トーマス・アンダーソン監督が、カルト教団をテーマに取り上げた傑作ドラマ。ホアキン・フェニックスフィリップ・シーモア・ホフマンによる、迫力満点の演技合戦も話題になりました。

話自体もかなり面白かったですが、やはりメインキャスト二人の芝居が素晴らしかったです。主演のフェニックスのとち狂いっぷりも凄かったですが、ホフマンの不気味さと迫力を併せ持った怪演が最高。もう見られないのが寂しい限りです。

 

ビー・デビル (6月13日 鑑賞)

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ソウルで銀行員として働くヘウォンは、ひょんなことからトラブルを起こしてしまい休職、故郷である孤島を数年ぶりに訪れた。外界から隔絶された孤島では、常軌を逸した男尊女卑が今もなお続いており、ヘウォンの幼馴染であるボンナムもまた、他の女たちの黙殺のもと、夫や男たちから凄惨な虐げを受けていた。彼女はヘウォンに、娘と共にソウルへ連れて行ってほしいと懇願するが……。

最新作『愛に奉仕せよ』が公開中のチャン・チョルス監督による長編デビュー作ながら、各国の映画祭で高い評価を受けた傑作スリラー。あまりにも強烈なストーリーは、実際に起こった三つの性暴行事件をベースにして執筆されました。

ひたすら胸糞悪い前半、そのフラストレーションが暴発する後半……という『わらの犬』的な構成。その上で、展開にひねりが効いており、演出の巧さ(無駄のない見せ方、容赦のない残酷描写)も相まって、期待以上でした。オススメです!

 

ある戦慄 (6月22日 鑑賞)

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ジョーとマーティのチンピラ二人組が、ある深夜の街を徘徊している。遭遇した人々に対し、無差別に理不尽な暴力を加えていく二人。やがて彼らは地下鉄の駅へと向かい、とある車両に乗り込んだ。そこに乗っていた人々……若いカップル、中流階級の夫妻、休暇中の軍人、同性愛者の青年、アフリカ系の夫妻……ふたりは人々に、容赦なき暴力と罵倒を浴びせ、車内はやがて惨劇の舞台と化す……。

チャールトン・ヘストン主演『パニック・イン・スタジアム』でも知られるラリー・ピアース監督による、サスペンスのカルト的傑作。主演を務めたのは、のちにドラマ/映画でスターとなったトニー・ムサンテ、マーティン・シーン

そこらへんの胸糞映画など歯牙にもかけない、これぞ真の胸糞映画。もう観ているだけで辛くて、しばらくはもう観たくないです……笑。しかしキャスト陣、緊迫の演出、巧妙な構成どこをとっても、超一級の名作だと思います。

 

恋するリベラーチェ (6月23日 鑑賞)

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舞台は70年代。豪華絢爛な衣装と演出による奇抜なパフォーマンスで人気を博していたピアニスト、リベラーチェ。田舎育ちの青年スコットはとあるきっかけで彼と出会い、親密に付き合うようになる。それまで孤独な生涯を送ってきた二人は、やがてお互いに深い愛情を抱くようになり、恋人として一緒に暮らすようになる。幸せな日々は、いつまでも続くように思われたが……。

大ヒットした『オーシャンズ』シリーズで知られる巨匠スティーブン・ソダーバーグが手がけた傑作テレビ映画。エミー賞では15部門においてノミネートされ、作品賞、主演男優賞(マイケル・ダグラス)を含む11部門を受賞しました。

とにかくマイケル・ダグラスの演技が素晴らしいです。今まで観た中では一番好きでした。全編、見事な構成で面白かったですが、特にクライマックス〜ラストの展開そして演出は、実話ならではの胸に迫る素晴らしさでした。

 

 

おわりに

以上、先月鑑賞した映画の中から、特に面白かった7本をご紹介しました。

母数が33本で、そのうちの7本だから、だいたい4分の1くらいの打率、ということになりますね。低くない?と思えなくもないですが「特に面白かった、いつかまた観たい」なので、それくらいのものかなと思います。たぶん。

いま現在も、私は映画漬け生活の真っ最中ですので、おそらく「7月編」も書けると思います。ただ、書けるのはもちろん7月が終わってからなので、投稿は来月に。来月(つまり今月の分ですね、ややこしい)も乞うご期待。

それでは皆様も、充実した映画ライフ(…?)を。

P.S. おすすめの作品などあったら、ぜひ教えてください!