シネクドキ・ポスターの回路

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ムーンライダーズの新譜が出た!

本日4月20日、じつに11年ぶりとなるムーンライダーズの新作アルバム『It's the moooonriders』が発表されました。

 

Amazon | It's the moooonriders (CD) | ムーンライダーズ

 

結成47年目、しばしば「現存する日本最古のロックバンド」と称されてきたムーンライダーズが「老齢ロックの夜明け」という売り文句とともに放った、通算23作目となるオリジナルアルバム。

今回は、一通り聴いた「とりあえず」の感想を記してみたいと思います。

 

 

 

 

ムーンライダーズ『It's the moooonriders』感想

ファンが待ちわびていた、いわゆる「ムーンライダーズ」らしさ……つまり、ポップでありながらも一筋縄ではいかない捻くれたセンス、それと「老齢ロック」の円熟風味が、見事なバランスで融合した貫禄の内容、というのが、アルバムを通した第一印象でした。

以下、一曲ずつの簡単な感想です。

 

01. monorail

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アルバムの幕開けにして、いきなり聴く者の度肝を抜く、あるいは一部のニッチな聴衆をニヤリとさせる「らしさ」全開の超怪作。どこか80年代の楽曲群、具体的に挙げるなら『超C調』などを彷彿とさせる内容です。しかし、無機質な音世界が演出されていた過去作とは異なり、本曲はコラージュでありながらも深い情緒を感じさせます。

 

02. 岸辺のダンス

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幻想的な一曲目を引き裂いてタンゴ風のイントロが鳴り響き、ついに慶一さんのボーカルがお目見えです。御年を召しても変わらない、その歌声が聴こえてきた瞬間は、やっぱりテンション上がりました。武川さんのバイオリンが、エキゾチックな音世界に映えまくっています。

 

03. S.A.D

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本作で唯一、武川さんが作曲に参加した楽曲。ほぼ全編にわたってリフレインされているギターリフが印象的です。そして、前曲とはまったく異なる方向性ですが、またもやイントロからバイオリンがよく映えている。音数は多いですが、めちゃくちゃモノラルです。

 

04. 駄々こね桜、覚醒

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作曲は白井さん。前の曲と比べて、アレンジがシンプルで聴きやすかった印象でした。だけど本当にカッコいいギターロック。捻くれたポップセンスも健在で、個人的にはアルバム前半のうち(タイトルを含めて)一番好きな曲。そして結局、アルバム全体を通しても「白井さん大活躍」が個人的な印象でした。

 

05. 雲と群衆

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慶一さん作詞・作曲ということで「ムーンライダーズらしさ」あふれる雰囲気ですが、言うなれば「らしすぎて」正直あまり印象に残っていません……。今回、私は本作を配信サービスで聴いたのですが、ちゃんとCDで買って、歌詞カードを見ながら聴けばよかったな、と所々で後悔しました。この曲も、歌詞を見ながら聴いたらしっかり味わえたかと思います。

 

06. 三叉路のふたり

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この曲も正直、あまり印象に残っていません。数々のポップな名曲を手掛けてきた岡田さんの作曲ということで、確かにポップで聴きやすい曲ではありましたが、しかし割とさっぱり、こじんまり仕上げられていたイメージです。曲としては、若い世代が歌っていても違和感のない雰囲気。

 

07. 親より偉い子供はいない

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親より偉い子供なんていません

親父より孤独な倅なんていません

ママより素敵な娘なんていません

そんな子供いません

個人的にアルバムのハイライト。一番好きです。タイトルからして最高、今この時代に、まさに「老齢ロック」にしか歌えない、この年代だからこそ歌える内容だと思います。キャッチーなメロディー、カッコいいバックで語りも湿っぽくなく、そこからマイナーへの転調、泣きのギターソロ(もはや青臭さすら感じる)という詰め込み放題の内容が素晴らしいです。ちなみに、語りは落語家の春風亭昇太さんによるもの。

 

08. 再開発がやってくる、いやいや

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続いてこちらも白井さん作曲。ストレートな王道ロックだった前曲とは対照的に、最近流行りのシティポップなどを彷彿とさせる洒脱な雰囲気。白井さんの作曲家としての振り幅が感じられる二曲です。印象的なゲストボーカルは『打上花火』のDAOKOさん。それにしても、慶一さんのラップが聴けるとは思いませんでした。

 

09. 世間にやな音がしないか

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この聴きやすいようで掴みどころのない、聴けば聴くほどハマるであろう「スルメ」感、かと思ったら後半いきなり転調する感じ、めちゃくちゃ慶一さんっぽいな……と思ったら、作曲は夏秋さんで驚きました。リスペクトも頂点に達すると「スルメ」感までコピーできるようになるのでしょうか。

 

10. 彷徨う場所がないバス停

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イントロの分厚いコーラスからして「ムーンライダーズ節」全開の一曲。今度こそ作詞・作曲ともに慶一さんです。モチーフとなっているのは二年前に起こった、東京・渋谷のバス停で路上生活の女性が撲殺された事件。明るさと暗さが交錯する複雑な歌世界は、まさしく慶一さんの真骨頂と言えるでしょう。名曲です。

 

11. Smile

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作詞・作曲は博文さん。メロディーとしてはポップでシンプルなものですが、ここまで凝ったアレンジが施されると、謎めいた神秘性すら感じてしまいます。単語たったひとつのタイトルもかえって深遠に思えます。個人的には『ボクハナク』を思い出しました。

 

12. 私は愚民

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アルバムを締めくくるのは、慶一さん作詞・作曲による9分超の大作。あまりにもシンプルなメロディーに「これで9分?五回くらい転調するのかな」などと思っていたら……ぜんぜん違いました。とりあえず今回は「ネタバレ」として伏せておきます。楽曲としてはさっぱりしたものでしたが、歌詞は十分に印象的でした。

 

 

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以上、現時点における私なりの感想を書き記してみました。

個人的な感想をざっくり書くとするならば、タイトルの通り「まさにムーンライダーズ」というのと「特に白井さんの曲が良かった」という印象です。加えて、今もなお鋭さの衰えない慶一さんの独特な歌世界もまた、印象的でした。

ところどころ「印象に残っていない〜」などと無遠慮に書いてしまった箇所もありましたが、ムーンライダーズの楽曲の特徴といえば、聴けば聴くほど魅力に気が付く「スルメ感」なので、これから聴き込んでいくうち、それぞれの楽曲の印象も大きく変わってくると思います。まずはちゃんと、歌詞を見ながら聴き直すことにします。

 

そして本日、アルバムの発売を記念して「特別試聴会」が開催されます!

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ムーンライダーズの六名が参加し、本編楽曲の試聴に併せて、メンバー本人から製作秘話などが語られるとのこと。本日20:00〜の開催で、無料で視聴することができます。アルバムに興味のある方は、こちらのイベントでトークと一緒に聴いてみるのも良いかもしれません。是非ご覧ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。