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哀愁が泣ける!デ・パルマ映画の切なすぎるスコア5選!

スティーブン・スピルバーグフランシス・フォード・コッポラマーティン・スコセッシなど、のちに巨匠となる名監督を数多く輩出した70年代のハリウッド。そして、彼らと並んで70年代のアメリカ映画シーンを代表する監督のひとりとして知られているのが、巨匠ブライアン・デ・パルマ監督です。今回は、そんなデ・パルマ監督のフィルモグラフィーサウンドトラックから選出した「泣ける!哀愁のスコア」を、厳選してご紹介します!

 

 

 

映画ファンに人気!ブライアン・デ・パルマ監督って?

まずは、ブライアン・デ・パルマ監督の経歴や作風について紹介していきます!

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70年代ニューハリウッド世代を代表する巨匠

デ・パルマ監督のキャリアは、ニューヨークを拠点として制作した短編やドキュメンタリー作品から始まりました。それらの作品が高く評価されたことを機に、1970年代にハリウッドへ拠点を移し、直後に監督した『キャリー』の大ヒットによって一躍その名を広く知られることになりました。70年代ハリウッド随一の鬼才として知られ、過激な内容から賛否両論を呼ぶことも少なくありませんでしたが、その後もパラマウント映画75周年を記念した大作『アンタッチャブル』や、トム・クルーズ主演の人気シリーズ第一作『ミッション:インポッシブル』などの大ヒット作を世に送り出しました。

熱狂的なファンも多数!その独特な映像美

デ・パルマ作品の最大の特徴は、ワイプ演出やスローモーションなどの映像技術を駆使した大胆な演出です。他に類を見ないほど、テクニカルな演出をふんだんに取り入れた映像には独特の世界観があり、熱狂的なファンも少なくありません。ちなみに90年代を代表する名監督クエンティン・タランティーノも、デ・パルマ監督の大ファンであることを公言しています。

映像テクニックを大々的に取り入れた演出センスは非常にダイナミックで、どこか大仰にも感じられるほどです。しかしデ・パルマ作品においては、この大仰さはかえって退廃的な印象を生み、むしろ虚しさや切なさを感じさせる効果を生んでいます。そんな哀愁を感じさせるデ・パルマ作品のサウンドトラックには、やはり哀愁にあふれた名スコア(音楽)が満載。というわけで今回は、デ・パルマ作品のサウンドトラックの中から、哀愁が沁みる「切ない名曲」5選をご紹介します!

 

 

デ・パルマ作品の「泣ける」哀愁のスコア5選!

これまで数多くの大物音楽家たちが、デ・パルマ作品にスコアを提供してきました。あの『愛のプレリュード』の作曲家として知られるポール・ウィリアムズ、言わずと知れた映画音楽界の巨匠エンニオ・モリコーネドナ・サマーのプロデュースで知られるシンセサイザーの先駆者ジョルジオ・モロダーなど、幅広いジャンルから錚々たる面々が音楽担当として参加、作品の心情を見事に体現した、素晴らしいサウンドトラックの数々を手がけています。それでは、さっそく聴いてみましょう!

Old Souls / Paul Williams 〜 映画『ファントム・オブ・パラダイス』より

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1974年公開の『ファントム・オブ・パラダイス』は、デ・パルマ作品初期の傑作として知られているロックミュージカル映画です。主人公である作曲家のウィンスローは、大手レコード会社の社長であるスワンに騙され、自作の曲を奪われ存在をも抹消されてしまいます。怒りに燃えるウィンスローは復讐を決意。スワンが主催する史上最大のロックコンサート「パラダイス」を舞台に、壮絶な復讐劇が幕を開けます。

この曲は、ウィンスローが想いを寄せる女性シンガー・フェニックスが、彼女に名声をもたらしてくれたスワンと一夜を共にする様子をウィンスローが目撃、雨に打たれながら慟哭するシーンで流れます。自分自身だけでなく、愛する人の心までスワンに奪われてしまったウィンスローの悲哀が、他でもないフェニックスの声で歌い上げられています。作曲はポール・ウィリアムズ。本作においてウィリアムズは音楽だけでなく、俳優としてスワン役も担当しています。

本作はロックミュージカルなので、全編にわたってオリジナルのロック楽曲が使用されており、そのすべてをポール・ウィリアムズが手がけています。どの楽曲も素晴らしく、サントラ盤は通常のロックアルバムとしても十分に楽しめる名盤です。ぜひ聴いてみてください!

 

Prelude / Pino Donaggio 〜 映画『ミッドナイト・クロス』より

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1981年公開の傑作サスペンス『ミッドナイト・クロス』で音楽を担当したのは、デ・パルマ作品の常連として知られる作曲家ピノ・ドナッジオデ・パルマ作品にドナッジオが提供した数々の名スコアの中でも、非常に高い人気を誇る一曲と言えるでしょう。本編随一の名場面である、あまりにも悲しいクライマックスを彩る旋律は、音楽だけでも切なさを感じさせる屈指の名曲です。

主人公であるB級映画の音響マン・ジャックは、ある録音作業中に交通事故に遭遇します。事故はタイヤのパンクが原因として処理されますが、ジャックの録音テープには事故の直前、タイヤを撃ち抜いた銃声が記録されていました。ジャックは、事故から唯一生還した謎の女性・サリーとともに、事件の真相に迫ろうとします。

映画の全編にわたって、この物悲しげなテーマが要所に挿入されており、物語の悲劇的な末路を示唆しています。そしてクライマックス、美しい音楽と映像が魅せる、あまりにも切ない二人の結末は、数あるデ・パルマ作品の中でも屈指の名シーンです!ぜひご覧ください。

 

Tony's Theme / Giorgio Moroder 〜 映画『スカーフェイス』より

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デ・パルマ監督の代表作のひとつとして知られる、1983年公開の名作ギャング映画『スカーフェイス』は、カストロ政権下のキューバから追放され、アメリカにやってきた一人の青年が裏社会でのし上がり、そして破滅していく姿を描いた作品です。主演を務めたアル・パチーノが演じた主人公「トニー・モンタナ」のキャラクターを含め、音楽やゲームなどの幅広い分野において、後代のクリエイターに多大な影響を与えた映画といわれています。

音楽を担当したのは、ディスコ・ミュージックにシンセサイザーを導入した先駆者であり、ドナ・サマーをはじめ数々の大物ミュージシャンを担当したプロデューサーとしても知られているジョルジオ・モロダーです。全編にわたって要所に挿入されているこのテーマは、裏社会に染まり、やがて溺れていく主人公トニーの生き様、その孤独や哀愁を見事に表現しています。非常に80年代らしいサウンドが、かえって重厚に響いていてカッコいいですよね!

 

Death Theme / Ennio Morricone 〜 映画『アンタッチャブル』より

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1987年、パラマウント映画の創立75周年を記念して制作された『アンタッチャブル』は、興行収入において不調が続いていたデ・パルマ監督にとって久しぶりのヒット作となりました。米国犯罪史有数のギャングとして知られるアル・カポネの逮捕に向けて奔走する捜査チームの活躍を描いた実録映画で、豪華なスタッフ&キャスト陣の起用でも話題になりました。

音楽を担当したのは、言わずと知れた映画音楽界の巨匠エンニオ・モリコーネ。世界一有名な映画音楽家の一人として、数えきれないほどのフィルムスコアを担当したモリコーネですが、本作のスコアは代表作のひとつであると言えるでしょう。中でも、ある登場人物が死を遂げるシーンで流れるこのメロディーは、映像なくとも思わず悲しさに浸ってしまう、情感あふれる素晴らしいスコアです。改めて、モリコーネの偉大な才能が感じられますね!

 

You Are So Beautiful / Joe Cocker 〜 映画『カリートの道』より

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最後は、1993年公開『カリートの道』のサウンドトラックからの一曲。こちらは映画オリジナルの楽曲ではなく、また実はスコアでもないのですが、デ・パルマ映画で「哀愁」の音楽、といえばこの曲は外せないと思ったので、紹介させていただきます。

アル・パチーノ演じる主人公のカリートは、かつては麻薬王として知られた身でありながらも、5年の懲役を経て出所したことを機に、恋人であるゲイルとともに堅気の生き方を志すようになります。しかし想いとは裏腹に、カリートは裏社会の面々によって再び抗争へと巻き込まれていき、残酷な運命に翻弄されていきます。

映画のラストで流れるこの曲は、1974年にジョー・コッカーが発表した名バラード。コッカーのしゃがれた渋い歌唱とシンプルな歌唱のリフレインが、カリートの哀愁に満ちた生き様、そしてゲイルへの一途な想いと重なります。いちど映画で聴けば「あの映画の曲」として認識されること間違いありません。映画の内容と見事にマッチした、素晴らしい選曲です!

 

 

他にも名作/名スコア満載のデ・パルマ作品!

いかがでしたか?今回ご紹介した作品の他にも、ティム・バートン監督の作品などで知られる映画音楽家ダニー・エルフマンが音楽を担当した『ミッション:インポッシブル』や、日本を代表する音楽家の一人である坂本龍一が手がけた美しいスコアが印象に残る『スネーク・アイズ』など、傑作スコアに彩られた名作が満載です。皆さんも是非、デ・パルマ監督のダイナミックかつ情感あふれる映像世界を味わってみてください!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!